◇ライブ録音(2003/10/26)
ここで言う「ライブ」はライブハウスやホールなどで行う「ライブ(コンサート)」という意味ではありません。
「生(演奏)の・生きている」というような意味で使っています。
最近(2003年8月後半〜9月前半)、ちょっとおもしろいレコーディングがあったので、それを通して感じた事を書いてみようと思います。
【一発録り】
知り合いのミュージシャン(Mさん)から「自分のCDを作りたいので手伝って欲しい」と言われ、このレコーディングに参加する事になりました。
最初に「差し替え・編集無しの一発録りでやりたい」と言われ、スタジオに入った頃からマルチ(アナログ24ch)で仕事をして、デジタル32ch・48ch、そしてProToolsなどのハードディスクレコーディングと、できる限りバラバラにレコーディングして、ミスったらその箇所だけやり直す、というやり方に慣れてしまっていた自分には多少の戸惑いがありました。
音質やバランスなど「後でなんとかなる」「TDの時に・・・」という考えが、意識していなくても頭のどこかにあったので、きちんとしたモニター環境の無い中で大丈夫かなぁ〜という不安があったからです。
【スタジオ!?】
まずは下見という事で、電車を乗り継いで待ち合わせの駅に集合して、そこからまた電車に乗ってとある駅へ、そこから車で30分程、連れてこられた(!?)場所は、田舎の香水がほのかに香る広〜い畑の中。
「こんな所にスタジオがあるの?」というロケーションの中、とある農家の倉庫の階段を上がって中に入ってビックリ!、新築の木の香りと共にド〜ンと広い空間(約70畳)が現れました。
手前にはソファがいくつか無造作に置いてあり、奥にはグランドピアノとドラムセット、それと大きなスピーカーが2セット置いてありました。
スタジオというよりも、超豪華な大きなリスニングルームという感じです。
趣味が高じて、ほとんど一人で作ってしまったという事ですから、これまた驚きです。
それにしてはスゴ過ぎる部屋の中で、当然、レコーディングのシステム自体整っていなく、ましてやブースやつい立ては無い訳で、その環境を見て、2ch(DAT)に一発録りを覚悟した次第です。
【2本のマイクで】

「差し替え・編集無しの一発録りでやりたい」という事に加えて、「極力オンマイクではなく、オフマイクでその場の空気感・臨場感も録りたい」という要望もあり、「空気感を録る=オフマイク」かどうかは別として、今回は限られた状況の中で、どう録るのがベストか?と話し合った結果、「基本的にはステレオバーにセットした2本のマイクをメインにしよう」という事になりました。
とはいえ「オンマイクも立てて音色やバランスの調整はそっちでやればいいかな」なんて考えていました。
最初のレコーディングは、ピアノとアコギのセッションだったのですが、ギターが聞こえにくいという事で、ちょうどそこにあった大きなスピーカー(ALTEC)から出してみたのですが、「ついでにリバーブも出してみたら」というMさんの一言で、リバーブもスピーカーから出してみたら・・・、これがまた、部屋の残響と相まってなかなか良い感じで・・・。
リバーブもスピーカーから出す事になり、また、たまたま2本のちょっと良いマイクと、2ch分のヘッドアンプがあったので、今回のMさんのいろいろな「こだわり」に、ちょっと自分も乗っかってみようかなと思い「じゃあ2本のマイク(ワンポイントのステレオ)だけで録ろう!」という事にしてみました(下の写真の卓は、リバーブをスピーカーから出す為だけに使いました)。
【バランス】
2本のマイク(ワンポイントのステレオ)だけで録るので、基本的な楽器間のバランス・距離感・定位感は、実際に楽器の位置を移動して調整しました。
ほんの数センチ動かすだけで、マイクを通して聴くと大きく変わるので、ちょっと驚きつつもだんだん面白くなってきました。
リバーブ(残響)も含めて、生の音で「いい感じ」に聞こえるように調整して、それをそのまま収録できれば・・・という考えでやってみました。
そして、何回か録ったり調整したりを繰り返しながら、基本的なバランスがとれたら、あとは演奏者まかせです(笑)。
【こだわり】

曲の終盤まで良い感じできて、最後の最後にミスったテイクも幾つかあって、当たり前のように「最後だけ繋ごうか?」って聞いても、Mさんは、頑として「いや、今それをやっちゃうと、このCDのコンセプト自体が・・・」と言って聞き入れませんでした。
たぶん今回のMさんの「コンセプト」(「差し替え・編集無しの一発録りでやる」という事)は、「最近のレコーディングに関する疑問や不満を解決する為に原点に戻る」という「こだわり」を貫き、こういった誘惑(!?)に負けないようにする為の「おまじない」だったのかもしれません。
【技術の進歩の善し悪し】
エンジニアの立場からすると「2ch同録するにしても、押さえで(何かあった時のために)マルチ(バラバラで)に録っておきたい」というのはありました。
そうすると、「後でどうにか・・・」という気持ちが出てくるのでダメ!と、今回は許されませんでした。
これは、たぶん、エンジニア側だけではなく、ミュージシャン側もそうなのかもしれません。
技術の進歩で、細かいパンチイン・アウトや、貼り付け(ポン出し)などが、いとも簡単にできてしまうと、時間の短縮というのもあり、それに頼ってしまいがちになります。
それが良いのか、悪いのか? 状況にも因りますよね。
例えば、「一曲の中で3箇所以上ミスったら、それは(自分の中で)良いテイクじゃないので、まるまるやり直す」というスタジオミュージシャンの方がいらっしゃいました。
妙に納得してしまい、未だに覚えています。
例えば、「他の部分はとても良くて、ここだけ直したい」というのは、自分的には「有り」だと思います。
エンジニア側も、最終形がある程度見えている場合や、モニターが良く分かっている場合などは別ですが、ほとんどの場合、後で加工するのを前提に録ったりします。
最初の内は、ほとんどそうでした(モニター側で音を作っていました)。
最近は慣れてきた(笑)事や、自分の音が分かってきた事もあり、録りの時に音を作る事も多くなってきました。
ひとつの音が、その曲のサウンド全体に関わってくる事もあるので、できるだけ最終形に近い音が出せるように心がけています。
【あとがき】
勝手な想像と、独断と偏見で、いろいろと書いてしまいましたが、もしかしたら、Mさんはまったく違う事を思っていたのかもしれません・・・。
でも、このレコーディングを通して、ちょっと忘れかけていた事や、新しい発見がたくさんあり、参加させてもらって良かったと思っています。
皆さん、お疲れさまでした!
という訳で、レコーディングされたのがこちらのCDです。
Xymox type 0『ManneRhythm』〜無限軌道〜 松崎 順司(2003/11/11発売)

【参加アーティスト】
AKI(A.Gtr)
小林 照未(Marimba)
太田 真季(Voice)
室坂 京子(Piano)
後藤 直(Flute)
後藤 幹(箏)

