◇生音のコンサート(2003/12/21)
引き続きですが「ライブ録音」に書きました『ManneRhythm』の、CD発売記念コンサートが、去る12月8日・9日、東京江東区「ティアラこうとう 小ホール」にて盛大に(!?)行われました。
【コンセプト】
CDのレコーディングの時にも、いろいろなこだわりがあったMさんなので、当然、そのCDの発売記念のコンサートにも、それなりのこだわりがある訳で・・・。
最初に言われたのは「PAを使わない」という事(クラシックの世界では、それほど珍しくないのかもしれませんが)、そして「CDをホールで再現したい」という事でした。
20年近く前に新宿厚生年金会館ホールで行われた「MJQ」のコンサートで、PAを使わないコンサートは客席側で体験していて、2階席の後ろの方の席でもきちんとバランスよく、しかも本物のホールリバーブ(残響)を伴って、とても心地よく聞こえた事を覚えていたので、ちょっと期待をしていました。
CDをホールで再現する事に関しては、今回のレコーディングがあまり機械的な処理をしていないとはいえ、コンサートの場合、見た目も大切だし(例えば、毛布で吸音とかできないし・・・)、ホールという空間の中で、どれだけ再現できるのか、少し不安はありました。
【ティアラこうとう 小ホール】
定員140名、ステージを中心に扇型に座席が広がっているコンパクトなホールで、今回のコンセプトにはピッタリのホールだと思いました。
床も壁もウッディーな感じで、響きも程良く自然な感じでした(客席側はもう少し響いてもいいのかな?とは思いましたが)。
ただ、ステージがそれほど広くなくて、良いポイントは結構狭かったので、楽器のセッティングにはちょっと苦労しました(時間に余裕があったので良かったです)。
【音響担当!?】
PAを使わないのに「音響担当」という事で呼ばれ、「楽器の場所が決まったら、やる事ないかな?」なんて、わりと軽い気持ちで現場に入りました(が、しかし・・・)。
着いたのは、ちょうどピアノの調律が終わり、ソロの時のピアノの位置を決めよう、という頃でした。
まずは、経験豊富な舞台監督の方がだいたいの場所を決めて、Mさんに弾いてもらい、客席を動き回りながらチェックしていきます。
コンパクトなホールの特性か、客席側では思ったよりも残響が少なかったので、ステージ上でピアノと反響板との距離を調整して、直接音と間接音(響き)とのバランスをとりました。
さらに、ピアノ自体の特性か、中低域が少し膨らんでしまい、高域の伸び少なかったので、調律師の方とも相談して、床の梁の位置を考えながら場所を移動したり、ピアノの脚に付いているキャスターの向きを変えてみたりしながら、バランスの良い位置を探しました。
ほんの数センチ動かしただけで、音がどんどん変わっていったので、だんだんおもしろくなってきて、「これでもOKだけど、試しに、こうするとどうなるか?」という事も、いろいろやってみて最善の位置を見つけました。
【バランス】
ステージがそれ程広くなかったので、ある程度の制約はありましたが、同様に他の楽器(ヴォーカル・琴・フルート・マリンバ・ギター)の位置が決まりました。
音を出しながら移動できる楽器(ヴォーカル・マリンバなど)は、音を出しながら移動してもらい、あまりにも如実に音が変わるのを楽しみながら、位置決めをしました。
見た目も考慮しつつ、音質的なものの位置決めが決まったら、あとはバランスです。
基本的には、ピアノのフタの開け閉め・ちょっと開けにより、バランスをとりました。
全体のバランスがとれたら、部分的なバランスは演奏者のアンサンブルにかかっています。
【そして本番】
本番が始まってしまえば、自分はやる事が無いのと、Mさんから「お客さんが入った時の感じを聴いといて」と言われたので、客席の後ろの方で観ていました。
お客さんが入る事で音の具合も変わるかな?と思っていたのですが、それほど変化しなかったので、少し安心しました(ホールの設計、椅子の仕様などが良いのだと思います)。
マイクを通していない生の楽器の音を、とても良い環境で、長い時間聴いている事はなかなかできない事なので、とても贅沢な気分になりました。
自然な響きの中に包まれて、演奏(音楽)にどっぷりと浸っていました。
そのせいもあってか、楽器が変わるたびに(例えば、ピアノから琴とか、ピアノからギターとか)、その音がとても新鮮に心地よく聞こえた事に、少し感動しつつ観ていました。
【コンサートが終わって】
まず思ったのは、レコーディングの前にこれをやっていたら、また違ったアプローチをしたのかも?という事でした。
でも、あのレコーディングが無かったら、このコンサートも無い訳で・・・。
生の楽器の演奏を聴いて、普段、スタジオでレコーディングする時に、楽器自体の鳴り(響き)に、ここまで気を使っているかな?なんて今更ながら反省してしまいました。
楽曲の中での後処理とかを考えて、残響は最小限に録る事が多かったので、楽器自体は良く鳴っていて(響いていて)、しかも音が散らないでグッと固まる(集中する)方法はないものか、より考えさせられました。
ホールとスタジオだと、目的が違うので、音響設計の考え方も違うのだとは思いますが、もっといいとこ取りできたらいいのになぁなんて思ったりしました。
いつもと違う環境に自分を置いてみると、今まで見えていなかったものが見えてきたりします。
今回のレコーディングもコンサートも、とてもいい経験(刺激)でした。

