ひとりごと

◇移り変わり〜アシスタントエンジニア〜(2006/02/16)

【技術の進歩に伴って】

技術の進歩や変化、そして流行などにより、レコーディングの方法やスタジオの在り方などは、刻々と変化をしてきました。
そしてエンジニアも、時代に取り残されないよう、日々、新しいやり方を研究し、勉強し、努力をして対応してきました。
自分が経験した中では「レコードからCDへの移り変わり」と「アナログMTRからデジタルMTRへの移り変わり」が特に大きな変化でした。
特にデジタルのMTRが導入された時は、毎日の調整の必要が無くなった事や、パンチイン・アウトのタイミング、レベルのとり方、トラック割りなどなど、精神面から技術面までいろいろな事が変わりました。
もちろん仕事は入っていたので、日々のスタジオワークの中で(または終わってから)使い方を覚え、試行錯誤しながら、少しずつより良いやり方を見つけてきました。
それまで、アシスタントの腕の見せ所であった、きわどいパンチイン・アウトや、コーラスなどのポン出しが、いとも簡単に出来るようになり、アシスタントの質(腕)の差が前ほど無くなってきました。

【一昔前のアシスタントエンジニア】

「初めてパンチイン・アウトをやった時に手が震えた」「パンチアウトの時、次の頭が欠けてしまった」「間違って違うトラックにバイアスをかけてしまった」などは、デジタルMTR登場以前のアシスタントのほとんどの人が経験した事だと思います。
エンジニアやミュージシャンの中にはちょっと怖い人もいたし(笑)、かなりの緊張感を持ってスタジオに入っていました。
MTRの調整も含め、始まる前にやっておく事もたくさんあったし、今よりも覚える事はたくさんあったし、出来る出来ない・知っている知らないの差も含め、技術面だけでも個人差があり、「アシスタントの力量」がクライアントがスタジオを選定する際の大きな要素の一つになっていました。
最近はそれ程多くはないと思いますが、当たり前のように「アシスタントの指名」がされていました。
当時は、先輩から技術的な事はもちろん、精神的な事もとことん叩き込まれました。
このサイトのコンテンツも、その頃の体験を下に書いているのですが、このところ、そのまま現在のアシスタントにはあてはまらなくなってきている部分がある、と思うようになってきました。

【ProTools】

例えば、パンチイン一つとっても、今(ProTools)では、心構えや緊張感が全く違うと思います。
パンチインアウトをミスったり、間違えて違うトラックの上から録ってしまったりしても、チョッチョッとやれば元に戻ってしまったり、後で微調整ができたりするので、さほど緊張する事も無く、ましてや手が震えるなんてことは無いと思います。
エンジニアがProToolsを操作していると、パンチイン・アウトもやる機会さえ減っているので、昔のようにパンチイン・アウトの特訓をしたりとかは少なくなったのではないでしょうか。

【アシスタントの現状】

例外は多々あるとは思いますが、エンジニアがProToolsを操作する事が多くなると、スタジオ内でのアシスタントの役割が変わってきて、このサイトの「Assi塾」にある「仕切るのはアシスタント」などは当てはまらなくなってきています。
セッティングと片付け、コピーや雑用などが大部分を占めるようになり、アシスタントの仕事や役割が大きく変わってきました。
極端な話し、セッティングなどが済んでしまえば、アシスタント無しでもスタジオの作業は進んで行きます(実際、アシスタントがスタジオにいない場合もあります)。
あまりにも暇なのか、居眠りをしているアシスタントも多々見かけます。
以前は、ちょっとした緊張感の中で、しかもたくさんの仕事をこなしていたので、居眠りする余裕(時間)などなく、その余裕がない中でも先輩の技術を盗んで自分の力にしていたものですが、スタジオにさえいないと、これからのアシスタントはどうやって成長して行くのか、少し心配になっていました。

【ちょっとした変化】

ProToolsのスタジオへの広まりにより、便利になったのはとても良い事だと思いますが、それにより失いかねない「良き伝統」「良き精神」もあると思います。
それらをリアルタイムで経験してきた自分たちの世代が、何らかの形で(現在に対応する形にして)後輩に伝えていかなければという気持ちはあっても、なかなか良い方法も見出せずにいましたが、ここ数ヶ月で、アシスタントの対応が少しずつ変わってきました。
スタジオに行くとエンジニアの方に向けて置いてあったPCのモニターとキーボード(ProTools用)が、アシスタントの方に向いていたので、理由を聞いてみると「(エンジニアから)奪い取るくらいの勢いで、積極的に(ProToolsの操作も)やろうかと思って」という事があったり、リズム録りの時などのマイクのセッティングを入念に見ていて、次に同じようなセッティングの時に、何も言わなくても前回と同じような(そのエンジニアに合わせた)セッティングがしてあったり・・・、などなど。
エンジニアが不安に思っていたと同じようにアシスタント自身も悩み考えていたようで、時代に対応した新しい形を求めて動き出したような気がします。
とはいっても、新しい事ばかりではなく、基本に戻ってという部分も多々あると思います。
アシスタントの方々には毎回お世話になっている訳で、ぜひとも頑張って欲しいし、新しい形のアシスタント、そしてエンジニアが出現するのが楽しみです。